2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18520606
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
溝口 常俊 Nagoya University, 環境学研究科, 教授 (50144100)
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Keywords | 日記 / 武士 / 農民 / 生業 / 日常生活 / 家族 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日記の解読を通して武士と農民の生活を明らかにすることである。 武士の日記については、「尾張藩士朝日文左衛門の描く妻」(林董一編『近世名古屋享元絵巻の世界』清文堂出版、2007年、189-211頁)で武士の女性の行動を明らかにしたのを契機に、その続編として元禄時代の自然災害(地震、火事、洪水)に際して、武士・町民がいかなる行動をとったかという点について分析を開始した。農民の日記に関しては、(1)山梨県御勅使川扇状地畑作農村の養蚕農家の明治30年代における日記の翻刻をおこなった。調査中に家計簿に相当する「金銭日記」が見つかり両日記の比較検討を開始した。(2)岐阜県輪中地域の地主である青木久兵衛日記の幕末明治期の日記の整理を行い、新たに発見した宗門改帳との照合をとおして、家族の中での個人生活の行動研究への可能性を見出した。(3)鹿児島県南種子島町の大崎蘇市氏の昭和6年から今日に至るまでの日記については、昭和8年〜11年までの4年分を翻刻し終えたところである。家族構成員全員の行動記録(昭和8年)が復原できたこと、北朝鮮へ旅行できたことなどの知見が得られた。 武士の日記の拙稿に対しては史学雑誌の学界展望で「従来の悪妻像の訂正を試みる」との評価をうけた。また農民の各地各時代の日記分析をとおして、農民が農業だけに従事していたのではなく、漁業、商業活動を含んだ実に多様な生業を営んでいたことが、共通して指摘でき、従来の農民像を覆すことが出来たように思う。 この3年間の同テーマの調査研究活動中に、あらたに北海道礼文島でタコ採り漁民の日記(現在89歳、現役漁師)が発見された。また江戸時代後半の津山の町奉行書日記も入手でき、これらの分析も加味することによって、「日記にみる武士と農民の日常生活に関する研究」をよりいっそう発展させていきたいと考えている。
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Research Products
(3 results)