2006 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ大都市圏内の問題地区再生と都市ガバナンスに関する社会地理学的研究
Project/Area Number |
18520612
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山本 健兒 九州大学, 経済学研究院, 教授 (50136355)
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Keywords | 都市政策 / ガバナンス / アクター / 参加 / エンパワメント / ドイツ / 社会的資本 |
Research Abstract |
1.ドイツの伝統的な都市政策は、市民に良好な物理的インフラと住宅施設を提供することにあった。しかし、それだけでは1990年代を通じて激化してきた都市内の社会的空間的な分極化に対処できない。そこで、「社会的都市プログラム」が、1999年以降、推進されてきている。 2.新しい都市政策を1990年代初めに開始した州がある。これが発展して、連邦と諸州の協力に基づくプログラムが発進した。16の州の建設・都市計画担当の閣僚たちのワークショップは、中央・地方政府内部の部局間の協力、さまざまな資金を組み合わせての活用、公・民の協力、街区住民のエンパワメントと自発的参加等々の、新しい都市ガバナンスの特徴をいくつか含む指針を出した。 3.問題街区の再生のだあに重要なのは街区マネジメントである。街区マネージャーは問題街区の潜在的アクターたちの自発的行動を呼び起こすべく活動し、街区のアクターたちと都市自治体当局との間も仲介する。街区マネージャーの活動は部分的に、問題街区に社会的資本があるか否かによって影響を受ける。それがない場合には、新たな社会的資本が創造されなければならない。その実践上のモデルがひとつしかないわけではない。実際、街区マネジメントの様式は、都市間でも、同じ都市内でも多様である。 4.新しい都市ガバナンスは新自由主義に典型的な特徴も有する。しかし、新自由主義的なグローバリゼーションが都市空間内の社会的空間的分極化の原因ともなっている。新自由主義の負の側面を和らげるために、互酬や再分配の力を利用すべきだろう。人間の諸関係や交流の3つの様式を如何にして結合するかは、未解決の問題である。3つの様式とは、ポランニーに従えば、市場交換、再分配、互酬であり、ハーシュマンの言葉を用いれば、声、退出、ロイヤルティである。新しい都市ガバナンスは、理論的にはこの観点から再検討されるべきだろう。
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Research Products
(1 results)