2008 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀前半のカナダ西岸のサケ缶詰産業における日系漁民と他民族との比較研究
Project/Area Number |
18520613
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
河原 典史 Ritsumeikan University, 文学部, 准教授 (60278489)
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Keywords | カナダ / 日系人 / 移住 / 漁業 / 缶詰工場 / 火災保険地図 |
Research Abstract |
バンクーバー市文書館(Vancouver City Archives)には、水産缶詰会社が缶詰工場ごとに調査・作成したReturns(報告書)が所蔵されている。それによれば、BC州南部にあるフィニキス・キャナリーには一定数の白人が従事するが、工場での缶詰め作業を中国人、漁船での漁獲を日本人が補完的労働力として担っている。それに対し、BC州最北部のアランデール・キャナリーでは、一部の白人が工場での重要な業種に就き、原住民のインディアンが主要な労働力となるものの、中国人と日本人が同様の補完的労働力になっている。この相違は、BC州最大の都市・バンクーバーに近接するフィニキス・キャナリーが、アジア系移民を比較的容易に取り込んでいることを示している。ほぼ同数の従事者数にも関わらず、その製造量が3倍も異なる点についても、市場の存在とその近接性に要因が求められよう。 アランデール・キャナリーについては、北太平洋漁業史博物館(North Pacific Historic Fishing Village)に所蔵されたDebit(個人別帳簿)から漁業者ごとの魚種別漁獲量が判明する。主要な魚種はサカイ種で、その最盛期は7月から8月であり、ほぼ1カ月後にはピンク種の漁獲が多くなる。ただし、それらの漁獲高には個人差がみとめられる。たとえば、和歌山県日高郡比井崎出身の清水直七が745尾のサカイ種を漁獲しているのに対し、鳥取県出身の西村熊太郎は、その半分にも満たない。彼らのピンク種の漁獲数はほぼ同数であるが、キャナリーでの買取が最も高価な魚種はサカイ種であるため、両者の収入には大きな差が生じている。
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