2009 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀前半のカナダ西岸のサケ缶詰産業における日系漁民と他民族との比較研究
Project/Area Number |
18520613
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
河原 典史 Ritsumeikan University, 文学部, 准教授 (60278489)
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Keywords | カナダ / 日系人 / 漁業 / 塩ニシン / 他民族 / 食文化 |
Research Abstract |
カナダ日本人漁業史において、サケ缶詰産業に対してほとんど看過されてきた塩ニシン製造業について比較考察した。 当時、カナダ水産界においてニシン(鯡・鰊)は重要視されず、一時的とはいえ、塩ニシン製造業は日本人漁業者の独占的な産業となった。しかし、1910年頃からカナダ政府は彼らの漁業ライセンス(漁業権)の削減を開始した。そして1912年にはバンクーバー島周辺の第三漁区における魚肥製造業が禁止された。1923年には日本人漁業者に対する漁業ライセンスは、サケだけでなくニシン漁業でも半減された。1925年になるとカナダ政府は、1928年までに塩ニシン製造業における日本人をすべて解雇するという通達を発表した。1926年には白人、ネイティブ・インディアンのみにニシン漁業のライセンスが交付され、法律上では日本人は雇用者とならざるをえなかった。 イギリス連邦諸国を中心とする太平洋沿岸地域へのサケとは異なり、ニシンはカリブ海沿岸地域へ燻製物として輸出されていた。それ以外にも、ピクルスへの加工が多いことにも注意しなければならない。アジア方面への塩ニシンとは別物のこのニシン加工品は、第一次世界大戦の勃発によって、主たる生産・消費地であったイギリス、オランダやノルウェーなどからカナダへの輸入が途絶えたため、BC州でも起こった。そこで、経験豊富なスコットランド系を雇用し、この加工品を製造する日本人漁業者も現れた。その販路はアメリカのニューヨークやシカゴが中心で、ユダヤ系がおもな購買者であった。また、西インド諸島、特にジャマイカへの輸出も顕著であった。 第二次世界大戦以前、カナダ漁業界で等閑視されてきたニシンを漁獲し、それを主要な輸出品までに成長する機会を惹起させた日本人漁業者の活動は、サケ缶詰産業と同様に、太平洋をめぐる食生活にも大きく関与したのである。
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Research Products
(4 results)