2009 Fiscal Year Annual Research Report
東アフリカ牧畜社会における「稀少資源をめぐる競合ドグマ」の人類学的再検討
Project/Area Number |
18520617
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
曽我 亨 Hirosaki University, 人文学部, 准教授 (00263062)
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Keywords | 民族紛争 / 稀少資源 / 競合 / ガブラ / 避難民 |
Research Abstract |
平成21年8月4日から9月4日にかけて現地調査をおこなった。調査は、避難民生活をおくっていた牧畜民ガブラが帰還しつつある状況を踏まえ、ヤベロ地域を中心におこなった。調査項目としては、紛争以前の生態資源に関する利用状況や、紛争にいたる過程だけでなく、帰還してきた人びとが現在、どのように生態資源を利用しているのかといった点にも注意を払った。帰還後の生態資源の利用状況についてインタビューによる調査をおこない、さらに帰還民め分布状況を把握するために、GPSを用いてガブラの集落を記録していった。 その結果、生態資源については、昨年と同様、他民族と共同で利用していることが明らかになった。一方、帰還民の分布は、紛争前とおなじく幹線道路に近い地域に集中していることが判明した。過去の紛争については、生態資源よりもむしろ幹線道路沿いの土地や商業施設をめぐって勃発したことがわかっている。そこで今年度の結果は、将来の紛争を予感させるものと患われた。 その一方で、今回新しく見出された現象として、帰還民と他民族とのあいだに共同でおこなう経済活動が観察された。これは帰還民が主体となって行う経済活動で、旱魃が長期化する北ケニアで購入した家畜をヤベロ地域に運んで肥育し市場で売るという活動と、ヤベロ地域で購入したミルクを北ケニアとの国境地域に運んで売るという二つの活動からなっていた。このうち家畜の運搬や肥育、ミルクの運搬などの部分に複数の民族がかかわっていた。こうした民族を越えて形成される経済活動は、将来の紛争防止に寄与するものとして期待される。
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Research Products
(2 results)