2006 Fiscal Year Annual Research Report
フロンティアーが誕生する時:フィリピンにおける米国植民地主義に関する研究
Project/Area Number |
18520620
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鈴木 伸隆 筑波大学, 大学院人文社会科学研究科, 助教授 (10323221)
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Keywords | フィリピン / 植民地主義 / ミンダナカ島 / イスラーム教徒 / 民族同化政策 / モロ州 / 米国陸軍島嶼局 |
Research Abstract |
本研究はフィリピン・ミンダナオ島が歴史的に「周縁」化される過程を、1898年から1946年までの米国植民地期に限定し、歴史(文字)資料と文化人類学的手法を併用して、考察することを目的としている。初年度にあたる平成18年度は、神話化されたミンダナオ島をめぐる植民地言説の形成を具体的に考察した。調査は米国国立公文書館(メリーランド州)と議会図書館(ワシントンD.C.)で、一次資料収集を行った。前者には、当時フィリピン植民地支配を担当した米国陸軍島嶼局(通称:BIA)の公文書が、後者の公文書セクションには米国軍人から寄贈された個人コレクションがそれぞれ保存されている。特に調査者は、フィリピン・ミンダナオ島をめぐるイメージ群がどのように変容し、新たに改変されていったのかを探るべく、植民地行政官、職業軍人、米国企業家、あるいはキリスト教徒フィリピン人政治家の資料(英語およびスペイン語)を収集した。その結果、次のような知見が得られた。(1)首都マニラを中心とするキリスト教徒フィリピン人政治家も、南部ミンダナオ島には興味関心を抱いており、積極的にキリスト教徒の移住を議会に働きかけていたこと、一方(2)南部ミンダナオ島でビジネスを展開する米国資本家は米国軍人と協力して、ミンダナオ島をフィリピンから切り離し、米国の領土の一部にしようとする動きが活発化していたこと、である。すなわち、当時米国と植民地フィリピンにはミンダナオ島をめぐって多様なアクター間で利害関係が錯綜しており、フィリピンにおける米国植民地支配は「支配者(米国・為政者)対被支配者(フィリピン・フィリピン人)」という、単純な二項対立構図では捉えきれないことが、理解できた。なお、本研究の成果の一部は、(1)平成18年7月第11回フィリピン研究大会全国フォーラムで「ミンダナオ島は誰のものか:ミンダナオ島分離独立要求とフィリピン自治要求問題(1905年-1913年」(於:中京大学)として、(2)平成18年11月第1回国際フィリピン研究会議にて、「Assimilation or Segregation:"Moro"Muslim Integration and Agricultural Colony Project in Cotabato, Mindanao」(於:東京グリーンパレス)として、それぞれ個人発表を行い、公表している。
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