2007 Fiscal Year Annual Research Report
フロンティアーが誕生する時:フィリピンにおける米国植民地主義に関する研究
Project/Area Number |
18520620
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鈴木 伸隆 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 准教授 (10323221)
|
Keywords | フィリピン / 米国 / ミンダナオ島 / イスラム教徒 / コロニアルな主体形成 / 分断政治体制 |
Research Abstract |
平成19年度は、宗主国米国が、植民地国家フィリピンの真の政治的主体をどのような存在と定義し、誰を具体的に想定し、さらに主体構築あるいは変革のために、どのような働きかけを具体的におこなったのかを考察した。現地調査は昨年度同様、米国国立公文書館(メリーランド州)と議会図書館(ワシントンD. C.)で一次資料収集を行った。と同時に京都大学東南アジア研究所図書室に所蔵されている日刊紙を閲覧も行った。 その結果、次のような知見が得られた。(1)米国の対フィリピン植民地政策は、国内の利害対立から決して一貫したものではなかったこと、(2)米国内への反帝国主義運動からの批判をかわすためにも、植民地国家フィリピンの独立と自治付与を目標とした、同化政策推進の必要性あったこと、(3)被支配者であるフィリピン人をキリスト教徒と非キリスト教徒に分類し、植民地内にこつの異なる統治機構を導入する独自の政策が実施されたこと、が明らかとなった。このことから、米国は「文明化」されたキリスト教徒、とりわけそのエリート層(指導者層)と連携しながら、参政権や国民議会の設置など、自治付与に向けた大胆な取り組みを行う一方で、ミンダナオ島はイスラム教徒や非キリスト教徒高地民に対しては、自治を著しく制限するなどした軍部主導の政治支配を1903年から1913年まで継続したという、植民地国家フィリピンの固有性・特異性が浮かび上がった。ミンダナオ島に関していえば、同一植民地でありながら、植民地の中にもう一つの植民地、すなわち中央に支配される地方(周縁)の誕生という、フィリピン特有の植民地状況の重層性が確認できた。また、分断的植民地状況下での政治体制がコロニアル主体間にもポスト植民地期から現在まで影を落とす従属関係を必然的に持ち込むという興味深い結果も導き出せた。
|