2008 Fiscal Year Annual Research Report
フロンティアーが誕生する時:フィリピンにおける米国植民地主義に関する研究
Project/Area Number |
18520620
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鈴木 伸隆 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 准教授 (10323221)
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Keywords | フィリピン / 米国植民地支配 / イスラーム教徒 / 文明化 / フィリピン化政策 / 主体化 / 権益拡大 |
Research Abstract |
平成20年度は、米国による植民地統治が被支配者であるイスラーム教徒にとって、どめように経験されたのかを考察した。具体的には、米国植民地統治がどのように近代化・文明化の過程として現出したのかを、植民地プロジェクトにみる価値、観念、規範の内面化という視点より分析した。資料収集は昨年向様、京都大学東南アジア研究所図書室で所蔵されている英字新聞 (マイクロフィルム)の閲覧した。その結果、文明化を受容する被支配者であるイスラーム教徒、とりわけダトゥと呼ばれるエリート層は、米国植民地国家体制下において、自らの権益を維持するために、支配者に協力するなど、植民地制度・政策に積極的に関与した、しかし、他方で武力闘争といった抵抗運動を継続する弱小エリート層が存在するなど、対応に大きな偏差があった。ところカミ、1913年に米国の政権転換による対フィリピン植民地政策の変更、すなわちいわゆる 「フィリピン化」 政策導入により、植民地国家フィリピンの実権がキリスト教徒エリートに移譲された。それに伴い、キリスト教徒のミンダナオ島の実質的支配を警戒するあまり、イスラーム教徒の中には、米国の植民地支配継続支持というねじれが顕在化する。以後、米国からの独立要求するキリスト教徒エリート層と米国支配継続を要求するイスラーム教徒エリート層間の対立関係が構造化する。このことから、イスラーム教徒による文明化政策・プロジェクトの受容は、フーコーの指摘する「臣民化=主体化」論では十分に説明でさない。むしろ、米国支配継続支持は勢力を拡大しっっあったフィリピン人マジョリティであるキリスト教徒に対する牽制であり、自己の権益擁護と拡大を目的に、米国主導の文明化を擁護したというのがより適切である。
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