2007 Fiscal Year Annual Research Report
現代インド在地社会の民主化における価値と倫理の文化政治学
Project/Area Number |
18520624
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加納 隆至 Kyoto University, 霊長類研究所, 教授 (40045050)
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Keywords | インド / 民主化 / 在地社会 / ポストコロニアル / カースト / 供犠 / 倫理 / 平等 |
Research Abstract |
平成19年度においては、1)データの整理と分析、2)補完的現地調査、3)ジャーナルなどでの成果発表を行った。本研究を通じて、現代インド在地社会における民主化の倫理的基盤として、公的な「人権の平等」という考え方と並んで、在地の「生命の平等」という考え方および「全体の福祉のための多元的社会集団の協力」という供犠的な原理が重要な役割を果たしていることがわかった。低カーストや女性は、こうした供犠的原理の言説を用いることによって、自らの正当な政治参加権を主張している。現在インドの論壇ではポストコロニアル版リベラル・コミュニタリアン論争が展開している。つまり国家・社会の倫理的基盤として尊重さるべきは、近代国家が保証する権利なのか、それとも共同体に継承された徳なのかをめぐる議論である(Amartya Sen, 1999. Reason before Identity; Bose & Jalal eds. 1998, Nationalism, Democracy and Development; R. Bhargava ed. 1998, Secularism and Its Criticsなど)。現在、インド在地社会の低カーストや女性は、平等主義的な供犠原理にもとづく民主的協力という新たな社会モデルを提唱しているが、そうした動きは、この論争における「国家/共同体」「権利/徳」「近代/伝統」といった二分法を凌駕していく可能性があると考えられる。
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Research Products
(3 results)