2009 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアの水産資源や漁場利用慣行に関する比較研究-民俗知モデル構築をめざして-
Project/Area Number |
18520627
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Research Institution | Miyazaki Municipal University |
Principal Investigator |
李 善愛 Miyazaki Municipal University, 人文学部, 教授 (90305863)
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Keywords | アマ(海女・海士) / 水産資源利用 / 漁場利用慣行 / 漁業権の相続 / 密漁 |
Research Abstract |
本研究は、日韓両国の地域別アマ(海女・海士)の漁業と生活について社会・経済、宗教、生態との関係から総合的にみることで、日韓両国の水産資源と漁場利用慣行について海域別「民俗知」の特徴を明らかにする。そのため平成21年度は、環シナ海(韓国西海岸沿岸京畿道地域と、日本東北沿岸地域で聞き取り調査を行った。その結果を地域別にまとめると、以下のとおりである。 まず韓国の西海岸沿岸地域は海女を中心に船で操業し、海藻類は共同体で管理、採取・分配しているが、海藻採取は人手が要るため、高齢化と人口減少で海藻漁場の共同管理、利用形態が、村人の共同資源管理形態から個人による資源や漁場利用形態に変わりつつある。一方、日本海沿岸の東北地域は海女の高齢化により男性がその後を継いでいるが、一方、都会から若い女性の参入する新しい現象もみられている。また、太平洋沿岸の東北地域は他のところより密漁に敏感で村人が共同で監視している。その一方、村ごとに独自の漁場利用や持続的資源利用のための制度を運用しながら社会、経済、環境の変化に対応して運営しているのが他の地域より著しく現れる。 以上からみると、環シナ海沿岸における日韓両国のアマ(海女・海士)には高齢化と密漁、災害(自然的、人工的)という問題が自然と社会,経済変化より深刻であること、韓国では個人による漁場利用形態への変容、海女のいない漁村では、漁場利用に関する株制度の運営によって新たな人の参入を制限して代々長男だけが漁場利用権利を相続する形で持続的な資源利用戦略をとっているのが大きな特徴といえる。
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