2006 Fiscal Year Annual Research Report
中国粤東地域における無縁の死者祭祀の偏差・伝播・歴史的変遷に関する民俗学的研究
Project/Area Number |
18520628
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ibaraki Christian University |
Principal Investigator |
志賀 市子 茨城キリスト教大学, 文学部, 准教授 (20295629)
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Keywords | 無縁の死者 / 海陸豊 / 潮州 / 梅州 / 義塚 / 善堂 / 義民信仰 / シャーマニズム |
Research Abstract |
本年度の研究は、2回の現地調査と1回の資料収集調査を中心に行った。 まず、平成18年8月1日から14日まで、広東省海豊県及び陸豊県にて、無縁の死者を祀る墳墓の由来、祭祀単位、伝説に関する聞き取り調査と善堂の調査を行った。その結果、聖人公媽や百姓公媽と呼ばれる墳墓の分布は海陸豊から潮汕地域まで広がっていること、また聖人公媽や百姓公媽ははっきりと区別されておらず百姓公媽も顕霊すること、聖人公媽の顕霊にはシャーマンが多くの場合関わっていることなどが明らかになった。また今回調査した墳墓に関しては、蛮族退治に功績のあった将軍や明代の義士という伝説が少なからず聞かれた。これは無縁の死者祭祀から義民信仰へという発展形態を裏付ける資料として注目される。調査終了後、これまで調査した海陸豊地域の聖人(百姓)公媽及び関連する墳墓の名称、墓碑名、伝説等を網羅したリストを作成した。この調査の成果は、10月14日に慶応義塾大学東アジア研究所の研究会において、口頭発表を行った。 平成19年1月4日から8日までは、香港大学と香港中文大学の図書館において、調査対象地域である海陸豊、潮汕、梅州、台湾北部の地方志や歴史資料など、今後現地調査を補うために必要となる基本的な文献資料を閲覧し、複写した。 平成19年3月7日から16日には、広州→潮汕(潮州及び汕頭を含む地域)地域→梅州→広州というルートで、現地調査を行った。まず広州では、広東省立図書館の分館である中山文献館にて、潮州、嘉応州の善堂や宗教結社に関する文献を閲覧し、複写した。その後、潮州、掲陽、潮安、汕頭などの地域で、善堂の参観と聞き取り調査を行った。また汕頭大学図書館の潮汕文化資料センターで、関連する文献を閲覧し複写した。その後、梅州に向かい、嘉応大学客家研究所の案内で、梅州市内の義塚や善堂を調査した。
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