2007 Fiscal Year Annual Research Report
中国粤東地域における無縁の死者祭祀の偏差・伝播・歴史的変遷に関する民俗学的研究
Project/Area Number |
18520628
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Research Institution | Ibaraki Christian University |
Principal Investigator |
志賀 市子 Ibaraki Christian University, 文学部, 准教授 (20295629)
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Keywords | 義民信仰 / 義塚 / 台湾北部 / 有応公信仰 / 潮汕善堂 / 中元節 / 国立中央大学 / 客家 |
Research Abstract |
本年度は、年度初めに提出した研究実施計画のとおり、まず6月12日から13日にかけて台湾仏光大学主催の国際シンポジウム「20世紀中国の宗教運動と救贖団体」に参加し、「潮汕善堂的善挙與救劫論」というタイトルで発表した。またシンポジウム終了後は中?市の国立中央大学客家社会文化研究所を訪問し、資料収集及び夏の現地調査に関する情報収集や研究協力者との打ち合わせを行った。 次に8月21日から8月29日にかけて、客家社会文化研究所の大学院生の協力を得て、台湾北部の義民廟や有応公の調査を行った。この時期はちょうど旧暦七月十五日前後の中元節にあたっており、どこの廟でも祭祀行事やそれに伴う神猪のコンテストなどの行事が行われていた。今回主な調査対象としたのは、桃園県楊梅鎮の集義祠と呼ばれる廟である。集義祠はもともと義塚の一種であったようで、万善公とも呼ばれている。8月22日と23日はちょうど集義祠の中元法会にあたっていたため、祭祀組織についての聞き取りを行ったり、儀礼を観察したりすることができた。集義祠の祭祀活動は「八大聯庄」と呼ばれる8つの地域が毎年輪番で担当する。こうした祭祀組織のあり方は、義民信仰の中心的存在である枋寮義民廟とも共通する。枋寮義民廟が客家の象徴的な信仰として権威づけられた、突出した事例とすれば、楊梅鎮の集義祠は、義民として権威化される以前の、より素朴な義塚信仰の形態を残している事例ではないかと思われる。報告者は、義民信仰は義塚信仰の一形態と考えているが、集義祠の事例はこの仮説を検証する上で重要であると考える。 8月24日は新竹市の有応公、大衆爺を祀る廟を訪ね、その後新竹市文化局で資料収集を行った。25日は基隆市及び台北県の有応公の参観、及び関係者への聞き取り調査を行なった。この他、新竹県文化局、台北市の書店等で関連書籍を購入した。帰国後は収集した文献資料、聞き取り調査の資料、写真の整理を行い、大陸の事例との比較を進めている。
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