2008 Fiscal Year Annual Research Report
中国少数民族の歴史人類学的研究--特にシボ(錫伯)族を中心に
Project/Area Number |
18520637
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Research Institution | Fukuoka Jo Gakuin University |
Principal Investigator |
丸山 孝一 Fukuoka Jo Gakuin University, 大学院・人文科学研究科, 非常勤講師 (80037035)
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Keywords | 少数民族 / 民族教育 / 錫伯(シボ)族 / 歴史人類学 / 新彊 / 文化変容 / ナショナリズム / 文化力学 |
Research Abstract |
研究対象とする中国の少数民族シボ(錫伯)族は、1764年、遼寧省から新彊ウイグル自治区へ国境警備のため派遣された人びとで、今なお民族文化の伝統を維持しているが、他方、彼らの原郷である遼寧省瀋陽市藩北新区などに残留するシボ族は伝統文化をほぼ完全に失ってしまっている。両者におけるこの間の文化変化をドミナントな漢文化とのかかわりの中で比較検討するのが本研究の目的であり、そのため、両地域で現地調査を実施した。 遼寧省瀋陽市瀋北新区興隆台では失った伝統文化を再復興する動きがあり、新疆から来た教師が伝統文化復活の使者として活動し、地方政府もこれを支援している。他方、西部の新疆ウイグル自治区チャプチャルでは、240余年間、イスラム文化圏の中で伝統文化をよく維持してきたが、今日、西部大開発など、都市化、資本経済化、漢文化化など構造的改革が急速に進展中で、漢民族との通婚も進んでおり、これらの家族内では漢語(中国語)の使用が一般的となっている。政府は少数民族文化の尊重を謳ってはいるが、現実には学校教育による直接的な漢文化化が進められており、進学・就職における若者の中央文化志向が強い。昨年の北京オリンピックではグローバル化とナショナリズムが促進され、地方少数民族文化が中央の文化的社会経済的求心力に引き寄せられる過程が見られた。シボ族が自らの伝統的スポーツである弓術アーチェリーで全国代表選手として出場したのは、民族文化のベクトルとナショナリズムのそれが一致し増幅した瞬間であった。新疆と遼寧省のシボ族が今後、どのような自発的な民族教育をして、自らの文化を維持発展するか、またどのように漢文化、ナショナリズムと折り合いをつけてゆこうとするのかが注目される。
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Research Products
(3 results)