2006 Fiscal Year Annual Research Report
イスラーム世界における法学派の伝播と定着-地域社会の法と宗教
Project/Area Number |
18530001
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柳橋 博之 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 助教授 (70220192)
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Keywords | イスラーム / 法学派 / マナーキブ |
Research Abstract |
本年度は,資料を収集するとともに,研究課題に関わる論文2点を投稿した。 資料収集に関しては,2006年7月31日より14日間にわたりカイロに滞在し,ここ2-3年に刊行されたものを中心として書籍を相当数購入したほか,主として国立図書館にて,初期イスラーム法学と法学派の学祖の偉業を扱った写本を調査した。その結果,相続法に関する8世紀の著作の写本と,スンナ派4大法学派の一つであるマーリク派の学祖マーリク・ブン・アナスの偉業に関する伝承集(12世紀に編纂)の写本を入手した。いずれも校訂・出版されていない資料である。 論文に関しては,第1に,『イスラム世界』に掲載された「バスラのズファルー「イマーム」の誕生」においては,主としてクーファで活躍し,同地で学派を創始したアブー・ハニーファの学説が,イラクのもう一つの中心都市であるバスラにどのようにして伝播し,支配的な学説になっていったのか,その過程を,アブー・ハニーファの高弟ズファルに関してバスラで相伝された伝承を分析することを通して描き出した。 第2に,『日本中東年報』に投稿した「アブー・ハニーファ讃を思想研究資料として利用するための基礎的考察」においては,アブー・ハニーファの偉業を讃える伝承がその真偽や成立年代を確定できないためにいままで思想研究資料としてあまり活用されてこなかった現状に鑑みて,統計的手法によりその大まかな成立年代を決定する方法を提唱した。同論文は現在審査中である。
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