2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18530004
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
水林 彪 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (70009843)
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Keywords | 民法 / 不法行為 / ボアソナード / フランス民法 / 日中比較 / 土地所有法 / 近代 / 現代 |
Research Abstract |
1.ボアソナードの民法典草案のうち、不法行為法および財産編の部分を精読する作業に取り組んだ。不法行為法の部分については、従来議論のあるfauteの概念について、新しい理解を得ることができた。すなわち、fauteはしばしば「過失」と訳されるが、ボアソナードにおいては、これは行為者の主観的状態にかかわる概念ではなく、「義務違反作為」ないし「違法性ある作為」の意味であることが判明した。また、財産編については、ボアソナード草案が、「債権」概念の確立の画期をなす重要な作品であることが判明した。すなわち、それまで、obligation(義務)の観点から理解されていた契約が、ここにおいてdroit(権利)の観点から理解し直されたことである。総じて、ボアソナード草案は、日本近代法史のみならず、西欧における近代法史(近代民法史)の次元においても、きわめて重要な位置をしめる作品であることがわかってきた。 2.中国在外研究の機会にめぐまれ、「民法における近代と現代」というテーマに関連する研究会に出席したり、講演をおこなった。講演は二つ、一つは、社会科学院における講演。ここにおいては「土地所有法の日中比較」と題する講演を行った。これは、日本の近世幕藩制下の土地法の近代のそれへの転換(特に、土地売買の非承認から土地売買の公認への転換)を、中国および西欧の土地法史との比較において特徴づけたものである。今一つは、精華大学における「近代民法の歴史的性格」と題する講演。これは、日本および中国の近代民法の原型をなした西欧の民法、とくにフランス民法の歴史的性格を論じたものである。 3.活字になった研究成果はまだない。
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