2009 Fiscal Year Annual Research Report
ADR促進法とADR実践の構築:法と運用実践の相互構築過程の法社会学
Project/Area Number |
18530014
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
和田 仁孝 Waseda University, 法学学術院, 教授 (80183127)
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Keywords | ADR / 裁判外紛争処理 / メディエーション / 調停 / ADR法 / 司法書士 / 土地家屋調査士 |
Research Abstract |
本年度は、最終年度であり、本研究の最終的な知見の取りまとめと、新たな課題の構成に向けた検討、および補足的な調査作業を中心に行った。司法書士会、土地家屋調査士会、医療事故紛争領域でのADRなどについて、状況と、特性の分析を行った。 第一に、司法書士会など職能団体の場合であっても、緩やかな統一性を持つにとどまり、各地設置機関の手続、構造については、単位会のADRについての理念的姿勢の差異から生じる変異、弁護士会との政治的関係やスタンスから生じる変異などが見られることが確認された。たとえば、司法書士会では、簡易裁判所事物管轄範囲内では訴訟代理権を持つことから、認証を得ずに、そのままADRを設置するパターン、弁護士会との協働によりADRを設置するパターン、報酬をADRを設置するパターンなど、ADR法の規定との関係で多様なタイプの設置形態があることが確認できた。これは、必ずしも好ましい多様性ではなく、認証制度が一つのネックとなって、設置形態に制限があることの反映である。また土地家屋調査士会でも弁護士と対話促進型手続運用のモデルとの間で、若干の緊張関係がある。 第二に、手続き次元でも、相談前置の体制を整えているところ、手続き内で法的情報教示などの機能も含ませているところなど多様である。 第三に、実際の機能面では、やはり必ずしも件数が多いわけではなく、各職能構成員の事故のクライアントの事案を持ち込むなどの利用形態も多くみられた。設置が直接には利用につながっていない実態がみられる。 第四に、医療事故紛争解決領域でのADR設立の動きについても確認したが、東京の三弁護士会による医療ADRのほか、千葉での医師会、弁護士会、行政の協働によるADRがADR法上の認証を受け、また各地の弁護士会が医療ADRを設置するなどの動きもみられる。今後、これらの実態の把握と機能性の評価が大きな課題となる。
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Research Products
(3 results)