2007 Fiscal Year Annual Research Report
情報財の保護と自由利用:著作権法上の事前差し止めに関する憲法学的考察
Project/Area Number |
18530023
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
阪本 昌成 Kyushu University, 大学院・法学研究院, 教授 (00033746)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小島 立 九州大学, 大学院・法学研究院, 准教授 (00323626)
|
Keywords | 著作権 / 表現の自由 / 差止請求権 / 事前抑制 / 不法行為的言論 / 名誉 / 情報取引 / 個人情報 |
Research Abstract |
著作権は、一方で排他性(独占権)を権利者に与えることを通して、知的創造へのインセンティヴを創造者に与え、他方で情報(知識)の持つ「公共財」としての属性を活かすことによって、その自由な使用を法認しようとしている。言い換えれば、著作物は「情報財」としての属性と公共財としての属性の双方を持っている。財産権としての著作物を法的に保護するための強力な手段が事前差止めである。日米ともに、著作権保護を理由とする事前差止めは、「事前抑制禁止の原則」または「検閲禁止の法理」と関連づけられることなく、許与されてきた。アメリカの研究者が、これを「表現の自由に対する事前抑制ではないか」と問い始めたのは、ごく最近である。 本研究は、このアメリカの動向を探りながら、著作物の「情報財/公共財」としての属性を、法的に(ときに、Law and Economicsの視点から)分析し、事前抑制の許与要件を析出することを目的としている。 阪本は、プライバシー・個人情報保護との比較から、この問題へのアプローチを試みた。プライバシーや個人情報の保護についても、これを財産権と類似なものとして法的保護を考えるべきとするアメリカ法の学説があるためである。この成果は日中公法学シンポジウムでの報告や、近刊の論考「プライバシーの権利と個人情報の保護-情報財の保護か自由な流通か」(『現代国家と法の支配』佐藤古希記念)、さらには『憲法2-基本権クラシック』の改訂に生かされている。 小島は、デジタル環境における情報取引の局面から、著作権と表現の自由の問題にアプローチをした。その成果は、国際著作権法学会での報告や、知的財産研究所編の『デジタル・コンテンツ法のパラダイム』として発表した。
|
Research Products
(10 results)