2006 Fiscal Year Annual Research Report
法と経済学によるタックス・エンジニアリングと社会保障:所得税法の近代化と立法学
Project/Area Number |
18530029
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
木村 弘之亮 日本大学, 大学院総合科学研究科, 教授 (60051885)
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Keywords | 立法学 / 法と経済学 / 所得税法 / 社会保障 / 貨幣の時間価値 |
Research Abstract |
現行の所得税法が、利子論および数理の視点からみて、奇怪な法律要件と法律効果を定めており、その結果、利子論(いわゆる貨幣の時間価値に関する知識ベースを身につけている)優秀な租税専門家の一部は租税法上の鞘取り(tax arbitrage)を全世界にわたって行なっている。節税商品やタックス・シェルターの売買が先進諸国で広く行なわれている。 このようなアクションに対抗するためには、日本の所得税法・法人税法等は、利子論および数理経済学の視点からみて、早急に抜本改革を施されなければならない。 どのようにすれば所得税法はそのようなアクションに対し合理的に規律できるかが、本研究の課題である。1に、ミクロ経済学や利子論に裏打ちされた所得税理論を構築し、2に、その理論を法律条文に翻案(変形)することが目的である。 所得税法は、伝統的に、所得税を支払う能力のある者から税金を徴収することを主たる役割としてきた。その他に、所得税法は、所得を支払う能力というよりむしろ不足する所得を補完するため、国家から所得移転を必要とする国民に対し、助成交付金を支給する役割を担うこともできる。このような負の所得のアイデアに依拠する国民助成交付金を、所得税法がどのように所得税と統合することができるか。マクロ経済学に裏打ちされた社会保障論と所得税理論を統合して、その融合理論を法律条文に翻案(変形)することが従たる目的である。 すでに、複数のドイツの関係教授と文書交換により、議論を白熱させてきた。さらに、平成18年6月にブタペストで開催された欧州税法教授学会にて、綿密な研究の準備の打ち合わせをした。平成18年10月ドイツにて共同研究(ドイツ法曹会大会、ケルン大学、フランクフルト大学等にて)を遂行した。 税額控除方式を応用した、所得税と社会保障法の統合案には、所得税を納付することのない低所得者が顧慮されない短所があることは、周知のとおりである。
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