2008 Fiscal Year Annual Research Report
先制的自衛権論の新展開-歴史的および現代的視点からの研究
Project/Area Number |
18530033
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浅田 正彦 Kyoto University, 大学院・法学研究科, 教授 (90192939)
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Keywords | 先制的自衛権 / 大量破壊兵器 / テロリズム / 国家安全保障戦略 / 非国家主体 |
Research Abstract |
本年度は、本研究の最終年度であり、これまでの研究の結果として明らかとなった点を踏まえて残された課題に取り組むと共に、これまでの成果のとりまとめに努めた。 昨年度の研究において、ロシア、インド、オーストラリアなど一部の国において、先制行動論を支持する主張があることが明らかとなったことから、いかなる理由と背景の下にそのような主張が行われたのかを検討した。その結果、いずれの場合も、直近に自国自身がテロの犠牲になった経験を持つことが影響したようであることが判明した。そのような背景の下での先制行動論の支持は、ある程度割り引いて評価する必要があろう。 他方、より広く国際社会全体としての反応を見れば、上記以外の諸国において先制行動論を支持する主張はほとんど見られず、むしろ軍事問題ではアメリカと同一歩調をとることの多いイギリスや、同盟国フランスなどが先制行動論に批判的であるか、少なくともそれに与していない点が注目される。さらに、2005年のアナン報告においても、急迫した脅威に対する先制的自衛権は国連憲章によってカバーされているが、急迫していない脅威には安保理が対処すべきであるとして、後者のような場合における自衛権行使を間接的に否定している。 以上の諸点からすると、9.11を契機にアメリカによって提唱された先制行動論は、国際社会全体としては受け入れられていないという結論に至らざるを得ないように思える。
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Research Products
(5 results)