2006 Fiscal Year Annual Research Report
個別的同意に基づく保護規制の拡張および縮小の可能性についての基礎理論的研究
Project/Area Number |
18530041
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大内 伸哉 神戸大学, 法学研究科, 教授 (10283855)
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Keywords | 労働法 / 規制緩和 / 個別的同意 / 労働者概念 / 従属性 / 過半数代表 / 労働者代表としての正統性 |
Research Abstract |
平成18年度は、まず労働保護規制の弾力化に関して、労働者代表の関与のあり方という観点から研究を進めた。この年度は、これまで私が労働者代表に関して研究した成果をまとめたモノグラフを発表している(『労働者代表法制に関する研究』(有斐閣))が、本研究は、この研究成果とリンクさせて、それをさらに発展させるという意味ももっている。具体的には、労働条件の中には、現行労基法のような過半数代表が関与してのみ規制緩和が認められるものがあるが、その根拠はなにか、また立法論としてどのような労働条件であれば規制緩和に適したものであるかについて検討した。これは、個別的同意による適用除外の可能性を考える際に参考になるものである。現在の中間的な結論は、安全衛生など公序性が高い規制でない限り、少なくとも集団的主体の関与による適用除外は認められてよいというものである。問題は、当該主体が労働者代表としての正統性をいかにしてもつか、という点にある。 他方、個別的同意の問題は、同意をする労働者をどのような主体としてみるのかという問題と関係している。つまり、労働の従属性という考え方にたっている限り、労働者の個別的同意による規制緩和は支持できない。そこで、平成18年度は、この点について比較法の動向を調べるため、ドイツとイタリアの法制度を調査した。どちらの国でも、労働者の個別的同意による適用除外という考え方にはきわめて消極的であった。 さらに、今年度は、逆に労働者の従属性という考え方に否定的な立法論を検討の俎上にのせ、法学者としてはどのようなスタンスに立つべきかについて分析をした論文(「法制度と実態の関係に関する二つのテーゼ」)を執筆した。これは、本研究を進めるうえでの基礎的な研究成果という意味をもつ(なお、この論文は、脱稿済みであり、信山社から出版予定の山口浩一郎先生古稀記念論文集に収められる)。
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