2008 Fiscal Year Annual Research Report
個別的同意に基づく保護規制の拡張および縮小の可能性についての基礎理論的研究
Project/Area Number |
18530041
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大内 伸哉 Kobe University, 法学研究科, 教授 (10283855)
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Keywords | 労働法 / 個別同意 / 規制緩和 / 労働者概念 / 従属性 / 過半数代表 / 労働者代表としての正統性 |
Research Abstract |
平成20度は,本研究の総括を行った。本研究の初年度である18年度には,従来から行ってきた労働保護規制の弾力化に関する研究を継続し,比較法的な観点からの分析を行った。これは,労働保護法規制の弾力化における労働者代表の関与のあり方という観点からこれまで進めてき研究成果(単著『労働者代表法制に関する研究』(2007年,有斐閣)で公刊済み)をベースにして,さらにこれを発展させ,どのような労働条件規制であれば,弾力化に適するかを検討し,さらに,その枠内で,個別的同意によるデロゲーション(法規制からの脱)の理論可能性を模索するというものであった。そこでの中間的な結論は,安全衛生など公序性が高い規制でない限り,少なくとも集団的主体の関与による適用除外は認められてよいというものであった。平成19年度は,いわゆるパートタイム労働法の改正,労働契約法の制定など,本研究に関係する重要な法律の制定ないし改正があったため,これらの法改正のもつ理論的インフリケーションについての研究を中心に行った。特に労働契約法においては,労働者の個別的同意のあり方について新たな規制が設けられておりこれについては労働者代表による関与とは異なる形での個別的同意の規制であると評価している。平成20年度は,前年度がら行ってきた労働契約法9条の解釈問題に焦点をあて,個別的同意にいかなる法的を認めるべきか,とりわけ労働者の個別的同意に労働条件の利益変更の効果を認める場合において,いかなる実体的,手続的要を課すのが妥当であるのかという点について研究を行った。この点についての結論は,実体的要件を課すことについては否定的で,手続的要件,とりわけ労働組合などの労働者代表の関与が重要であるというものである。なお,本研究の成果は,2009年秋の日本労働法学会で発表する予定である。
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