2006 Fiscal Year Annual Research Report
法人に対する刑事制裁をめぐる実体法的・手続法的諸問題に関する比較法的理論研究
Project/Area Number |
18530045
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
岡上 雅美 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 准教授 (00233304)
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Keywords | 法人処罰 / 経済刑法 / EU刑法 |
Research Abstract |
本研究第1年目の成果としては、研究の前段階の作業として比較法的研究を行った。すなわち、ヨーロッパレヴェルでの法人処罰の現状を明らかにしたことにある。第1に、EU法がヨーロッパ圏内の経済統一を目指すものであったために、経済犯罪の統一的処罰を当初の目的としたために法人処罰を各加盟国に要請したことがある。その下で、各加盟国は法人の刑事処罰の立法を行ったということが背景であり、その過程を調査し、外国の研究者を招聘して講演会を開催した。 例えば、法人刑事処罰を否定していたが、新たに立法的に対処して法人に刑罰を科すこととしたフランスは、1992年刑法典で法人の刑事責任を初めて認め、その後、いっそう、プラグマティックな観点から、わが国のように一定の犯罪について特別規定がある場合にのみ法人処罰を認める立法を2004年に改正し、自然人と同様に、法人もすべての犯罪について処罰しうることとされた。同様の立法例として、オーストリアがあり、EU内では法人処罰を強化する方向が趨勢となっている。これらの立法例は、法人処罰を認めながらも一定の特別規定がある場合にのみ制裁を課すわが国とも異なる立法形式として注目される。他方、ドイツ(ドイツ法の詳細は次年度の研究対象である)は、刑罰論の発展を背景にして、ドイツではむしろ法人に対する刑罰を否定する見解が優勢であり、したがって、秩序違反法で反則金(Geldbuβ過料)制裁を科している。また、スイス連邦も刑法典の中に法人制裁規定を作ったが、ドイツと同様の視点から、刑罰を法人に科すことはできず、反則金を課すこととした。以上のヨーロッパの趨勢を明らかにしたことが、本年度の成果である。
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