2006 Fiscal Year Annual Research Report
企業の組織的意思決定により生じる犯罪と個人の刑事責任
Project/Area Number |
18530049
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
神例 康博 鹿児島大学, 大学院司法政策研究科, 教授 (40289335)
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Keywords | 企業犯罪 / 企業の意志決定 / 責任帰属 / 法人処罰 |
Research Abstract |
平成18年度は、企業の意思決定過程について、経営学、組織論の知見を参考にしつつ学習するとともに、企業における組織的意思決定において、意思決定過程に関与した組織体構成員の刑事責任を論じる際の理論的諸問題を検討することを課題とした。 まず第一に、企業論、組織論、経営学の文献を収集し学習することにより、刑法的帰責を考えるにおいて注意すべき諸問題を明らかにするように努めた。それととともに、近時のコーポレート・ガバナンスをめぐるわが国及びドイツの動向について学習することにより、コンプライアンス体制を確立する責任の主体がどのように捉えられ、このことが、刑事帰貴論を考えるにおいてどのような意味をもちうるかについて検討した。これらの研究を通して、企業の組織的意思決定に内在する諸問題、さらには、コンプライアンス体制の確立における企業トップの役割と責任を確認することができた。 第二に、企業の意思決定過程に関与した組織体構成員の刑事責任を論じる際の理論的諸問題について、主として、企業の合議的決定について伝統的な刑事帰責論が十分に機能するかどうかを、先行する研究業績を参考に検討した。この問題は、すでにドイツにおいて「皮革スプレー事件」などを契機として積極的な議論がなされ、また、わが国においても議論の蓄積があるが、この点に関する刑法理論的な検討は次年度に予定されていることから、本年度は、刑法的帰責を考える前提として、企業の意思決定過程と企業トップの役割という観点から注意すべき諸問題を明らかにするように努めた。 これらの研究は、いずれも次年度以降の研究のための基礎研究と位置づけられる。
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