2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18530054
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
コーエンズ 久美子 山形大学, 人文学部, 助教授 (00375312)
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Keywords | 口座振替 / 証券決済 / 信託 |
Research Abstract |
本研究は、証券の口座振替決済システムに関する法律構成について、従来の有体物である証券に適用されてきた物権法理、有価証券法理を継承することの疑問を出発点とし、これに代わる新たな法律構成の提示を目的とする。また、口座振替による金銭の取扱いについても、近時疑問が提示されてきていることに照らし、証券との類似性を踏まえ、従来の取扱いに代わる新たな法的枠組みの構築を指向する。 本年度は、証券の口座振替決済システムに関する法律構成につき、その構造的特徴である口座管理機関が口座保有者の金融資産を預かるという「関係」を基礎とした分析が必要であるという認識のもと、信託法理からアプローチした。口座保有者は、金融資産を口座管理機関を通して処分し、権利行使するのであり、これは所有権に基づくモノに対する直接的な支配とは異なる。しかし、金融資産が実質的に帰属するのは、口座保有者である。このような金融資産の帰属のあり方は、信託関係における信託財産の帰属と同様のものとして捉えることができる。英米法諸国においては、信託財産の帰属という物権的な効果が、所有権理論とは異なる信託という「関係」に基礎づけられていること明らかにした。 このような英米法の信託の分析から導かれた「帰属」という概念が、わが国の口座振替システムにおける金融資産の取扱いにつき、新しい理論的展開をもたらすのではないかという方向性を示した。また、すでに多くの紹介がなされているアメリカ統一商法典第8編の再検討を通して、擬制信託も含めた信託法理が、わが国の口座振替システムの新たな法律構成の構築に有用であり、その受容可能性と受容のあり方を検討する必要性を提示した。
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Research Products
(2 results)