Research Abstract |
本年度は,まず,平成18年度から継続している民事、商事法定利率の適用問題から,過払金返還請求の際の悪意の受益者の付すべき利息,及び遅延損害金の法定利率のあり方について,従来の裁判例をほぼ網羅的に収集して検討した。この検討では,この法定利息,及び遅延損害金に,商事法定利率年6分が適用されるとする下級審裁判例も多数紹介し,この法定利息に民事法定利率年5分が適用されるとする最高裁判決の考え方に反対する根拠としている。この検討結果は,クレジット研究40号に発表した。 さらに,「裏の意味での利息」に関する研究として,期限の利益の放棄の際の未経過利息のあり方について検討し,従来の議論を不十分とする結論を得た。この論文では,従来の期限の利益の放棄に関する民法136条2項の議論が一回的・単発的取引を念頭に置いたものであり,近時問題が生じている消費者信用取引をはじめとする業務的・継続的取引には,直ちには妥当しないことを指摘し,このような取引に適合する法理として,取引の業務性・継続性に合致した別の法理を構築する必要性を提言している。この検討結果は,金沢法学50巻2号に発表した。 なお,これらに加え,金銭の不当利得の返還義務の範囲について,運用利益と法定利息の観点から検討し,さらに,民法の改正課題として,法定利率のあり方(変動制),利息債権のあり方(単利・複利)について立法提言としての検討を行った。これらは,すでに発表原稿として脱稿し,印刷のため原稿を送付済みであり,平成20年度中に印刷される予定である。
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