2008 Fiscal Year Annual Research Report
非訟事件特に家事審判事件における手続関係人の手続保障に関する基礎的研究
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18530060
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
本間 靖規 Nagoya University, 大学院・法学研究科, 教授 (50133690)
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Keywords | 非訟事件 / 職権探知主義 / 手続協力義務 / 審尋請求権 / 手続保障論 / 訴訟促進義務 / 当事者主義的運用 / 事案解明義務 |
Research Abstract |
本年度は、標記課題について、ドイツ、オーストリアに関して準備的に行ってきた判例学生をまとめて論説を発表した。そこでは、職権探知主義と当事者の手続協力義務の関係ならびに非訟事件手続における当事者の審尋請求権の保障との関連を探る作業が中心になった。日本においては、家事審判等の非訟事件手続の当事者主義的運用ということばが普及しているが、これを運用の問題として、裁判所の裁量に委ねるのではなく、理論の問題として、ルール化するための法的根拠を探るものである。ドイツにおいてこの議論が先行的に行われているが、そこでは、職権探知手続における当事者の手続協力義務は、事案解明のための義務として位置づけられ、審問がその役割を果たしているのに対して、審尋請求権を根拠とする当事者の態度表明権としての意見陳述とは概念的に区別されていることが分かり、日本の議論を分析する際に参考になる。本年度はまた、家事審判と手続保障に関する注目すべき判例が講評されたので、これに関する研究を行った。家事審判においては、憲法82条の適用がなく、非公開で審理することの合憲性がすでに最高裁で認められていたが、このことは、非訟事件手続に憲法の規定の適用がないことを意味すると最高裁は解しているようである。しかしながら、非訟事件とはいえ、何らの反論の機会も保障されないまま、上訴審で不利益な結論をとることを許すことになるのは、いかにも不適切なのではないか。なるほど特別抗告という憲法論に乗せなければ、相手方は保護されないか、許可広告塔の別の方法もあったのではないかが、問われるが、比較法的に見ても、この場合に憲法32条の適用による救済の道が一切開かれていないと考えるのは、妥当ではない。本稿はこのような問題意識に基づいて、憲法適用の際の問題点をも見据えながら、最高裁の法廷意見に反対する少数意見を擁護する論考を公表した。
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