2006 Fiscal Year Annual Research Report
企業の社会的責任(CSR)の現代的位相-新会社法における議論を軸として
Project/Area Number |
18530064
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
中村 美紀子 山口大学, 経済学部, 教授 (60363090)
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Keywords | 民事法学 / 商法 / 会社法 / 企業法 / 企業の社会的責任 / CSR |
Research Abstract |
現在のところ、CSRとコーポレート・ガバナンス関係を論じるものとして以下の4説を挙げることができる。(1)同一基盤説は、所有と経営の分離および経営者支配論がCSR論へ発展し、さらにCSR論がコーポレート・ガバナンス論へ発展したとし、両者は本質的、実質的にほぼ同一基盤に立つと解する。 (2)CSRの一環としてコーポレート・ガバナンスを捉える一環説である。コーポレート・ガバナンスを会社主権論と経営者モニタリング・システム論の2側面に分け、前者を論じる際に、公開会社は株主含むステイクホルダー全体のものと捉え、この考え方がCSRと関連してくるとするものである。利害関係者の利益を企業経営に反映させるかどうかもコーポレート・ガバナンスの範疇に入るとする。 次の2説は、両者は相違すると説く。まず(3)若杉説は、経営者の社会的責任であるとするCSRと株主の社会的責任であるとするコーポレート・ガバナンスとを分けて捉える。 (4)奥島説は、コーポレート・ガバナンスとCSRは交錯し共働すると捉える。コーポレート・ガバナンスとは会社経営の健全性・効率性を確保するためのマネジメントであるが、CSRとは、会社の健全性・市民性という観点からそれを実施・促進するマネジメントである。会社経営に取り組むに際し、コーポレート・ガバナンスが財務情報・経済的効率に重点を置くマネジメントであるのに対し、CSRは非財務情報にも配慮するマネジメントである。 私見では、CSRとコーポレート・ガバナンスとを同一とはできない。コーポレート・ガバナンスとCSRは会社法の枠組みのなかでは関連するであろう。しかしながら、CSRは会社法の枠組みのみで捉えるべきではない。より広い捉え方が必要であろう。もっとも、この両者はその相違を明らかにすることもさりながら、むしろその共働という側面、とりわけそのシナジー効果により注目されるべきとの奥島説にくみする。
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Research Products
(2 results)