2007 Fiscal Year Annual Research Report
企業の社会的責任(CSR)の現代的位相-新会社法における議論を軸として
Project/Area Number |
18530064
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
中村 美紀子 Yamaguchi University, 経済学部, 教授 (60363090)
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Keywords | 民事法学 / 商法 / 企業法 / 会社法 / 労働法 / 企業の社会的責任 / CSR |
Research Abstract |
CSRは一貫してステイクホルダーとしての従業員問題と取り組んできた。CSR1期および2期では、従業員を商法上の問題として扱った。会社機関への参加や取締役の義務に表れるものである。そこでの従業員は、程度の差こそあれ、ステイクホルダーの一員として所有者株主と対等に扱われる。経営に参加すれば、ものが言える存在になれる。この期間は、会社法の枠組みの中に会社法上の構成組織以外のものを当てはめようとしたことによるジレンマと闘ってきたといえよう。 他方、CSR4期では、従業員を商法以外の法分野で扱っている。労働法の補完や公益通報者保護法に表れている。ただ、公益通報者としての従業員はステイクホルダーとしての従業員ではないので本問題は他の論点とは異質とみる。労働法を補完することは、意義のあることではあるが、会社が従業員に対して与えるある意味恩恵のようなものとも考えられ、従業員のごきげんとりの様相も呈する。15世紀イタリアはメチェナティズモの如しであろう。 労働法の目的である「労働者の地位向上」をCSRによって図るためには、機関参加や労働法の補完のどちらも必要と考えるが、前者が達成されることが望ましいと考える。後者のような恩寵型の待遇向上だけではなく、会社の意思決定に関わることができて初めて真の地位向上を獲得できるのではないだろうか。CSR履行の観点から機関設計の多様化にさらに踏み込みたい。
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Research Products
(2 results)