2006 Fiscal Year Annual Research Report
キャッシュフロー・ファイナンスにおける利益調整規範の研究
Project/Area Number |
18530073
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小山 泰史 立命館大学, 法学部, 教授 (00278756)
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Keywords | キャッシュフロー・ファイナンス / 集合物譲渡担保 / 譲渡担保 / 債権譲渡 / 債権譲渡登記 / 通常の営業の範囲内の処分 / 動産・債権譲渡特例法 / 追及効 |
Research Abstract |
本年度は、主に最1小判平成18年7月20日(金融商事判例1252号4頁ほか)について検討した。同判決は、最高裁として初めて集合物の譲渡担保において、譲渡担保設定者に個別動産の「通常の営業の範囲内における処分」が認められることを明言した。さらに、当該処分が「通常の営業の範囲外」である場合でも、集合物として指定された範囲から離脱すれば、もはや譲渡担保の効力が及ばなくなることも、傍論で示している。抵当権の従物が「通所の営業の範囲」を超えて分離され搬出された場合には、抵当権者は原状回復請求をなし得ると考えられている。しかし、集合物譲渡担保の場合には、これと異なるということになる。両者は「担保物権の追及効」という面で異なるが、その相違をいかにして説明するかが、今後の重要な検討課題である。 また、同判決は、同一目的物上に複数の譲渡担保権が重複して成立しうる余地も認めたが、しかし後順位譲渡担保権者には私的実行をなすことはできないことも示した。これまで譲渡担保の私的実行について、先順位者と後順位者との間の配当手続をどうするかについては、ほとんど論じられていないため、今後の検討課題として残された論点である。 なお、この報告書の提出には間に合わなかったが、上記最高裁判決について拙稿を銀行法務21の2007年4月号に掲載する予定である。ただ、商業誌という性格上、字数制限が厳しいため、別途詳細な検討を論文として立命館法学等に執筆する予定である。 次に、東京高判平成18年6月28日(判例時報1936号82頁)について検討した。同判決は、キャッシュフロー・ファイナンスに関連する重要な制度である債権譲渡登記について、譲渡目的債権の原債権者と第三債務者を逆さまに誤記した場合に、その債権譲渡登記は有効ではないとした事例である。現在、2007年の通常国会に「電子記録債権」法案が提出されている。電子化された債権の譲渡について、その誤記のリスクを誰が負担するかは実務上重要な問題をはらむ。なお、この検討についても、近日中に判例時報付属の判例評論において成果を公表する予定である。
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