Research Abstract |
本年度は,総論の分野では,田村は,労働所有論や人格権といった自然権論でその存在意義を正当化することは困難であり、インセンティヴの付与に依拠せざるを得ないが、効率性の検証が困難である以上、民主的な決定等によるプロセス正統化に頼ることになる。もっとも、政策形成過程には企業の利益が反映されやすいという構造的なバイアスが働くので、これを解消するガヴァナンス構造を模索しつつ、司法の役割を活用することでプロセスの正統性を担保するとともに,帰結主義的な理論も呈示することで、裁量の枠を狭める、という構想を打ち立て,それを世に問う論文を発表するとともに,検索サイトや伝統的知識に関して,この考え方を要する研究を遂行し,その成果を公刊した。 また,情報契約と営業秘密の秘密管理の要件という視点で,小島が効率的な事業の遂行のために過度の情報管理を要求すべきではないというアメリカの裁判例を紹介する論文を発表し,田村が,この点に関する日本の裁判例の変遷を批判的に検証する判例評釈を著した。 伝統的知識に関して,田上が,WIPOやTRIPS理事会等の動向を調査し、遺伝資源等の不正使用等の新論点の分析を行い、外務省、特許庁等と意見交換をなす一方、伝統的知識の保護に積極的に取り組むニュージーランドの事例を研究した。田村が,中国武漢で開かれた国際シンポジウムの報告で得た知見を活用し、多文化主義,生物多様性という観点からプロセス志向の解決を探る方法論を発表した。 合わせて,総論につき1月の北大の国際シンポジウムで田村が報告し,田上,小島が参加,営業秘密につき12月の東京の国際シンポジウムで小島が報告し,田村が参加,伝統的知識につき9月の金沢の国際シンポジウムで田村と田上が報告するという形で,研究成果を世に問う作業を遂行した。
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