2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18530092
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
纐纈 厚 Yamaguchi University, 人文学部, 教授 (00234691)
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Keywords | 歴史認識 / 歴史和解 / 信頼醸成 |
Research Abstract |
平成19年6月に台湾の屏東牡丹社郷で開催された「台湾出兵に関する国際学術会議」に出席し、「台湾出兵と帝国日本の成立」を演題に研究報告の機会を与えられた。二度目となる同地での研究調査及び学術交流の機会を通して、1874年における台湾出兵の歴史的位置を探り、台湾研究者との討議を通して、従来等閑に附されていた台湾出兵(台湾側は牡丹社郷事件と言う)の日台関係史上の位置を明確にした。それにより、台湾側に残存する被害者としての苦痛を緩和し、歴史和解への道筋を発見することが出来た。歴史事実の確認と歴史認識の共有を踏まえて、はじめて歴史和解が結果すると確認できたことは大きな成果であった。今回の研究交流の成果は、台湾国内で各紙が報道した。また、『朝日新聞』(2007年6月26日付 第14面)の「歴史は生きている 東アジア150年:維新で動れるなか なぜ台湾出兵」で取り上げられ、日本国内でも大きな反響をも得ることが出来た。 9月に中国の山東大学と遼寧師範大学で「日中間の歴史認識の乖離をめぐって」と題し、学生及び研究者を対象に講演の機会を得た。そこでは研究課題「東北アジア諸国間の信頼醸成の片途と課題」に込めた問題意識を踏まえて、日本、中国、台湾、韓国で実施した3000名に及ぶアンケート結果の分析から得られた成果を報告した。また、日中関係史研究及び科研費による中国や台湾など現地資料調査により得た資料や証言などを用いて新たな歴史認識の一端を示した。その結果、歴史和解への方途を強調し、理解と支持を獲得することができた。研究調査活動により文献や資料のみに依拠するだけでなく、そこで獲得された歴史事実及び歴史認識について、現地で検証する機会を積極的に設定することの必要を強く痛感することになった。こうした研究課題を遂行する過程で台湾、韓国、中国の歴史研究者と深い研究交流の場を獲得できた。
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