2008 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀デモクラシー論の持続と変容--大衆社会・市民社会・シティズンシップ
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18530100
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山田 竜作 Nihon University, 国際関係学部, 准教授 (30285580)
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Keywords | デモクラシー / 大衆社会 / 市民社会 / シティズンシップ |
Research Abstract |
J. Schumpeter的な利益集団多元主義を前提とする自由民主主義に対し、参加デモクラシーという形でラディカルな批判を展開した理論家として、C. Patemanがいる。しかし彼女は1980年代に入ると、フェミニズムの視点を取り入れることで、自由民主主義の想定する市民が家父長制的に構成されていることを繰り返し論じるようになる。例えば彼女が批判するのは、一見して科学的な手法を用いているG. A, Almondらによる「市民文化」研究である。そこでは、経験的データに基づいた分析結果として、女性は政治参加の度合いが低いという結論が出されている。しかしPatemanに言わせれば、そこではデータの「解釈」の問題が不可視化されている。つまり、女性は政治に関心が薄い(あるいは、政治的能力が男性より劣る)ものだという前提に基づいたデータ解釈がなされているに過ぎない。だが、女性は政治的能力に乏しいから政治参加しないのではない。政治そのものが男性中心に構成されているがゆえに、政治参加は無意味であるとの合理的判断を女性はしているかも知れないのである。このようにPatemanは、家父長制的な前提が現実政治にも政治学という学問にも厳然とあることを丹念に検討することで、フェミニズムが女性という集団に固有のイデオロギーなのではなく、むしろ家 父長制的な自由民主主義こそイデオロギー性を帯びていることを指摘している。今日、シティズンシップへの共和主義的な関心が高まっているにもかかわらず、Almondらの「市民文化」の再検討はほとんどなされていない。まして、それに対するフェミニズム的批判は、満足に知られてもいない。しかし、それらはことごとく、20世紀デモクラシー論史の中に適切に位置づけられる必要があろう。
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