2009 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀デモクラシー論の持続と変容――大衆社会・市民社会・シティズンシップ
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18530100
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山田 竜作 Nihon University, 国際関係学部, 准教授 (30285580)
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Keywords | デモクラシー / 大衆社会 / 市民社会 / シティズンシップ |
Research Abstract |
現代デモクラシー理論におけるシティズンシップ論の活況は、20世紀のうちにその淵源を見ることができる。 シティズンシップを「共和主義」的観点から見るならば、それは政治共同体の成員資格のことであり、権利・義務関係をめぐる法的地位を意味することとなる。この観点からすれば、20世紀後半以降の「参加デモクラシー」論は、共和主義的な議論である。と同時に、シティズンシップはまた、19世紀欧米で確立した「雇用社会」という資本主義体制の中で、賃金労働に従事する者に対して認められるものでもあった。これを前提にすれば、失業者は対等な同胞市民して認められず、実質的にシティズンシップを失うこととなる。T.H.マーシャルらのシティズンシップ論が定式化した20世紀の(民主的)福祉国家は、国家に(兵役や納税を通じて)貢献する者に対する「保険(補償)」といった意味合いがあった。 しかし、以上のようなシティズンシップ観は、家族内における無償労働をすべて女性が行うという前提を持っており、その点では家父長制的なものであった。公私二元論を批判した20世紀後半のフェミニズム的デモクラシー論は、今日的なシティズンシップの再検討にとって重要な知見を提供している。既存のシティズンシップの理念を批判的に組み替えようとする昨今の議論には、一つには福祉国家再編をめぐるベーシック・インカム論があるが、これに連なる議論はすでに1980年代後半のフェミニズムが提起していた。今一つには、市民=国民という近代国民国家の前提を脱構築し、グローバル・シティズンシップを志向する議論であるが、冷戦終結後に活発化したこのような議論に対しても、やはりフェミニズムが重要な視点を提供しているとの指摘が1990年代になされていた。20世紀を通じての、デモクラシー論とシティズンシップ論の変容を見る場合、フェミニズムが果たした理論的役割は改めて確認されなければならない。
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Research Products
(1 results)