2008 Fiscal Year Annual Research Report
紛争後復興開発期の多民族共存社会における平和構築活動の現状分析
Project/Area Number |
18530118
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
大平 剛 The University of Kitakyushu, 外国語学部, 教授 (30303605)
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Keywords | 国際協力 / 平和構築 / 開発援助 |
Research Abstract |
研究の最終年度に当たる20年度は、まず18年度からの成果をまとめ、7月にスロベニアで行われた国際会議で発表を行った。次に、9月末から、10月上旬にかけて再度ボスニア・ヘルツェゴヴィナを訪れ、サラエヴォ市とモスタル市において国際機関現地職員を対象にインタビューを行い、19年度の調査で明らかとなった点の検証を行った。聞き取り調査の結果、モスタル近郊では紛争終結の混乱期に、特定民族を対象にした住宅建設が人道援助によって行われ、それによって人口地図の塗り替えが行われたことが明らかとなった。そのことが紛争終結後13年を経た現在においても地方選挙に影響を与えており、今なおエスノ・ナショナリズムに基づく政治を延命させる要因の一つにもなっている。このような弊害が認められる一方で、モスタル高校でのIT教育における日本のODAを用いた取り組みにも現れているように、異なる民族の学生を同一の授業で一緒に学ばせるという試みも行われており、和解に向けた取り組みも進みつつある。そのような中で、ヒアリングから明らかになったことは、モスタル市内には芸術や工業の専門学校が民族毎にそれぞれ一つずつ存在しており、それらがなかなか進展しない経済復興の中で経営に行き詰まりを見せているということであった。このことは開発期の平和構築援助にとっては好機と捉えられるように思われる。仮に、学校の統廃合を条件に援助を供与することができれば、モスタル高校での実験を超える成果を生み出すことができるかもしれないとの印象を得た。平和構築に資する開発援助の条件付け(コンディショナリティー)の可能性について研究することが今後必要となるだろう。
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Research Products
(2 results)