2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18530127
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
焼田 党 University of Tsukuba, 大学院・システム情報工学研究科, 教授 (50135290)
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Keywords | 人口変動 / 人的資本形成 / 経済成長 |
Research Abstract |
まず、先年度までに枠組みを固めてきたUnified Growth Theoryにもとつくモデルの分析結果を、昨年度の学会報告等でもらったコメントに基づいて修正し、さらに出生率の変化による人口変動がマクロ経済に与える影響の分析を進めた。当初、経済の発展経路が物的資本蓄積をエンジンとする(外生的)成長経路と人的資本蓄積をエンジンとする(内生的)成長経路が連続するものと考えていた。しかし、再検討の結果、それらは不連続であり、より大きな貯蓄(物的資本蓄積)をするような経済では、一人当たり所得が一定に留まる 「発展の罠」 に陥ること、そしてそこでは人口成長率が高止まりすることがわかった。他方、貯蓄が小さくなる傾向を持つ経済では、人口成長率力が低下すると同時に子供に対する人的資本投資が行われ、十分に時間が経てば、人的資本の成長率と同率で物的資本も蓄積され、したがって、一人当たり所得もその率で上昇する成長経路に至ることが示された。この分析では親の 「子供の質と量」 に関する選択が大きな役割を果たす。この結果は従来のGalorandMoav等の人的資本に対する需要面からの議論に対して、供給面から成長パターンの変化を説明しえていると考えられる。また、若年世代入口比率は経済の総貯蓄率に影響を与えるが、老年人口比率は影響を与えないことも示される。この結果も人的資本形成を考えていない従来の文献に対する修正の可能性を示すと考えられる。この修正版を関西地区のマクロ経済学研究者が主催する関西マクロ経済研究会で報告した。 研究期間内に生涯期間の伸長の影響を同時考慮することはできなかったが、公共資本蓄積政策に与える一影響は、資本の補修・更新という形で分析することができた。それに加えて人的資本蓄積と出生率をも同時に考慮する出発点としたい。
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