2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18530134
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小野 善康 Osaka University, 社会経済研究所, 教授 (70130763)
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Keywords | 失業 / 流動性のわな / 不況 / フィリップス曲線 / 関税 / 貿易数量制限 / 変動相場 / 国際資産取引 |
Research Abstract |
失業率とインフレ率とのトレードオフを示すフィリップス曲線には、フィリップス自身の示した曲線のほかに、最近の研究から、バックワードとフォワードの2つのモデルから得られるインフレ加速度型のフィリップス曲線や両者のハイブリッド型が提示されている。本研究では、これらそれぞれの動学的特性を研究し、貨幣量をコントロールする金融政策と、利子率をコントロールするテーラー・ルールのもとで、動学経路の安定性を分析した。その結果、貨幣量をコントロールする場合には、もとのフィリップス曲線以外の場合、動学的安定性が満たされて経路が一つに決まるのは、パラメーター条件がごく限られた場合にとどまることがわかった。 つぎに、国際的な金融資産取引を伴う2国開放経済モデルにおいて、不況が発生している場合を考え、関税や数量制限などの貿易政策が各国の経済活動や需要、失業率に及ぼす効果を分析した。失業に直面した国は、国内産業の保護と雇用確保のために輸入を制限する傾向がある。しかし、このような政策は自国の経常収支を黒字化するため通貨高を呼び、自国製品の国際競争力を悪化させてしまう。本研究から、その程度は非常に大きく、保護貿易による市場確保分を上回って、最終的な雇用も消費需要も減少することがわかった。このことは同時に、輸出国にとっての通貨価値の減少と、それによる国際競争力の改善をもたらすため、輸出国では、かえって経済活動や雇用、消費が改善することを意味している。そのため、保護政策を行った国では、ますます保護貿易的傾向が強まり、国際経済摩擦が激化する危険がある。このことは、80年代末の日米間での貿易摩擦のメカニズムを示唆している。
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