2006 Fiscal Year Annual Research Report
戦前・戦時期日本における総力戦理論の経済学的構成-ドイツ経済学説との関連で-
Project/Area Number |
18530149
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
柳澤 治 明治大学, 政治経済学部, 教授 (00062159)
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Keywords | 総力戦 / 国防経済体制 / Wehrwirtschaft / G.フィッシャー / K.ヘッセ / 有沢広巳 / 再生産論 |
Research Abstract |
第一次大戦の経験に基き「総力戦」の概念が一般化するが、1930年代の各国の再軍備体制への移行とともに、総力戦準備のための中・長期的な経済動員体制が構想された。Wehrwirtschaft・Preparedness・国防経済・準戦経済と呼ばれる体制で、平時経済を転換して戦争を準備する、中間的な、しかし段階として持続する可能をもった経済体制を意味した。今年度は、K.ヘッセ(Hesse)やG.フィッシャー(Fischer)に代表されるドイツのWehrwirtschaft論の内容を分析するとともに、それが同時代の日本でいかに受容されたかを検討した。日本のいわゆる国防経済・準戦経済体制論は、日中戦争直前に陸軍・石原莞爾によって結成された日満財政経済研究会において研究された。満鉄・宮崎正義を代表とするこの研究会においては、とくにG.フィッシャーのWehrwirtschaft論が注目され、同会はそれに基き国防経済体制論の方法論を構築する。他方K.ヘッセやヘッセ監修の『戦時経済年報』の諸論文の戦争経済論は、有沢広巳らの経済学者が重視し、「準戦時体制論」の理論的構成に結びつけられた。E.ホッホ(Hoch)のWehrkraft der Wirtschaftもヘッセに関連しており、この書物も1938年に邦訳された。有沢広巳をはじめ当時のマルクス経済学者は、戦争経済論をこのような総力戦準備体制論との関連で構成しようとした。労農派の伊藤好道がG.フィッシャーの国防経済論を飜訳したのもそのような流れにおいてであった。このような総力戦準備体制論と関連しつつ、軍需生産を再生産論の中に位置づける研究(有沢広巳の「第三部門」論)や「縮少再生産論」が展開する。マルクス経済学の弾圧という時代状況の下で戦争経済学の理論的研究が再生産論や経済表の研究と関係づけられて一定の成果を生み出した事実は戦時期日本の経済学の発展を評価する上で著しく重要なことと思われる。
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Research Products
(2 results)