2008 Fiscal Year Annual Research Report
経済危機の歴史政治経済学:大恐慌期の経済政策と経済学
Project/Area Number |
18530150
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
若田部 昌澄 Waseda University, 政治経済学術院, 教授 (00240440)
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Keywords | 経済学史 / 経済政策 / 大恐慌 |
Research Abstract |
本年度は、大恐慌期についての歴史的研究についての研究の最終年度にあたるので、これまでの研究成果の発表に力点をおいた。 学会報告については3つ行った。第一の報告は、大恐慌とその後のマクロ経済構想についての展望である。これは2005年に行った学会報告(「安定化論とその批判:1920年代貨幣景気循環理論発達の一側面」経済学史学会、2005年5月、大阪産業大学)の続きであり、金融政策、金融制度、国際通貨体制の三つの点における論争を検討した。ここでは、大恐慌後の合意形成に現実の出来事(event)と政策が深くかかわっていたこと、政策形成が現実におきる出来事と思想(ideas)に影響されるという相互依存的関係を強調した。 第二の報告は、マクロ経済思想の進化を金本位制から現代にいたる国際通貨体制との共進化として捉えたものである。 第三の報告は、ロバート・ダイマン(カナダ、ブロック大学)との共著であり、日本と欧州の二つの経済学史学会が合同で開催した国際会議で発表された.ここでは大恐慌期を含む日本の経済学者の西欧経済学との交流について、京都帝国大学が刊行していた英文雑誌Kyoto University Economic Reviewを中心としてみたものである。 以上の成果は、単行本としてまとめる予定であり、出版社も決定している。 なお、一般向けに「経済危機の処方箋を大恐慌、大インフレ、大停滞から学ぶ」と題して『エコノミスト臨時増刊世界景気最前線』(2008年10月13日号、96-105頁)で本研究の成果を一部紹介した。そこでは現在の経済危機を考察するために、大恐慌だけでなく、1970年代の大インフレ、そして1990年代から2000年代初頭にかけての日本の大停滞の三つの経済危機を対比している。
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