Research Abstract |
平成9,14年の全国物価統計調査,商業統計調査の個票データを特別集計し,商業構造と物価の関係,空間的な価格のばらつきの要因分析を行った。研究では,店舗間の価格差に商品の品質の差が含まれないようにするため,厳密な銘柄管理が行われている指定商標銘柄を中心に分析した。 指定商標銘柄は,物理的に同質な製品であるが,価格には分散があり,価格分布は多峰型である。小売店舗における価格分散の要因の一部は,業態,立地環境,従業員数などの店舗属性によつて説明される。特に価格との関係が強いと考えられる店舗属性として,店舗規模,業態,ディスカウント販売の有無,立地環境があげられる。店舗属性は,売り手によって付加されるサービスの質の差(製品の差別化)を表していると考えられる。付加サービスの差は,価格分散の一部を説明するが,価格分散全体に占める割合は小さく,価格分散の少なくとも一部は探索費用の存在によって生じていると考えられる。また,価格分散の大きさや価格分布の形状は,平成9年と14年で大きな違いはなく,製品ごとに安定的である。したがって,製品の性質や市場の構造が価格分散や価格分布に影響を与えていると考えられる。さらに,売り手の数の変化と価格分散・平均価格の変化の間には負の相関が観察された。これらの結果は経済モデルから導かれる予想と整合的である。全国物価統計調査のように大規模な統計データを用いた類似の研究はほとんど無く,重要な貢献であると考えられる。また,これらの結果については,日太統計学会,書籍等で公表した。
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