2007 Fiscal Year Annual Research Report
資源配分の歪みが日本経済の生産性に与えた影響の実証分析
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18530157
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
根本 二郎 Nagoya University, 大学院・経済学研究科, 教授 (20180705)
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Keywords | 確率フロンティア / 技術非効率 / 配分非効率 / トランスログ生産関数 / 日本経済 / 電気事業 |
Research Abstract |
本研究ではトランスログ型生産関数を使った確率フロンティア関数モデルに配分非効率を導入し、90年代日本経済のパフォーマンス低下要因を分析した。この方法では、従来の方法では考慮されなかった資源配分の歪みによる生産の損失を定量化することができる。本研究ではこれを80-90年代の47都道府県データに適用し、資本と労働を投入してGDPを産出するモデルによる分析を行った。その結果、資本と労働の投入比が最適比率がら乖離することによるGDPの損失は、バブル崩壊後の90年代も含め、分析期間を通じて小さくなる傾向にある。したがって、90年代の日本経済の成長率低下は、技術進歩率の低下と技術非効率の拡大によりもたらされたものであり、配分非効率が主因ではない。ただし、2000年においてなお、配分非効率の大きさはGDP実績値の10%程度である。同様のモデルを、わが国の電気事業の送配電部門(1981-1998年)にも適用して分析を行った。その結果によれば、わが国の送配電部円において非効率により失われた生産物(販売電力量)は期間を通して生産実績の30%程度であり、そのうち技術非効率による損失が10%,配分非効率による損失が20%相当である。通時的には、技術非効率は1990年代初頭まで減少した後反転して増大する傾向が見られるが、配分非効率は分析期間を通じて減少している。配分非効率の一貫した減少傾向は、マクロデータと電気事業に共通して認められ、それは90年代の不況期においても変わらない。本研究においては、資源配分の歪みが90年代日本経済の低パフォーマンスの原因であるという仮説は支持されない。
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