2007 Fiscal Year Annual Research Report
中国の経済発展と日本と中国の東アジア通商戦略:国際分業のCGE分析
Project/Area Number |
18530174
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
井川 一宏 Kyoto Sangyo University, 経済学部, 教授 (80031392)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
利 博友 大阪大学, 国際公共政策研究科, 教授 (40283460)
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Keywords | 中国の経済発展 / セグメンテーション / 動学的多数国CGEモデル / 東アジアの国際分業 |
Research Abstract |
本年度は、中国の経済発展の理論モデルを、東アジアの「新しい国際分業形態」のモデルに拡張し、さらにそれを「動学的な多数国CGEモデル」を使って数量的に捉えることを試みた。中国の経済発展は、経済的集積と分業の深化であり、後者が本年度の研究テーマの中心であった。 東アジアの分業は、日本(韓国・台湾)がコア部品を中国・アセアンに輸出し、中国・アセアンはそれを使った完成品を欧米に輸出するといった三角貿易である。この分業には、生産工程を分離独立させる、セグメンテーションを伴うが、その現象は中国内部でも別の形態で生じている。欧米・日本の企業進出から生じる部品系列システムから、複数の系列に対応できる汎用的部品生産の分離独立、セグメンテーションを生み、標準化競争の波を伴う分業システムに深化している。本年度の研究では、セグメンテーションの理論的分析が手がけられ、規模の経済と範囲の経済が東アジアの「新しい国際分業形態」に生かされていることがわかった。 東アジアでは、自然な形で経済統合と国際分業の深化が進んでいるが、FTAのいろいろな選択肢の評価についても、数量的に把握する必要がある。CGEモデルによる分析の結果、広範囲のアセアン+3(日中韓)FTAは、狭い範囲のアセアン+中国やアセアン+韓国などよりも、必要となる構造変化が少ないことが判明した。セグメンテーションによる分業が深化したなかで、安易な部分的FTAのグルーピングはかえってマイナスとなる点は興味深い結果である。日本の貿易政策として、戦略として広範囲FTAのグルーピングを目指し、戦略的なセグメンテーションを支援することが提言される。詳細は研究成果報告書にまとめられる。
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