2007 Fiscal Year Annual Research Report
内モンゴル自治区の資源管理と貧困削減-持続可能な生計アプローチによる研究
Project/Area Number |
18530211
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
牧野 松代 University of Hyogo, 経済学部, 教授 (80269977)
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Keywords | 持続可能な開発 / 内モンゴル / 貧困削減 / 環境管理 / 地域開発 |
Research Abstract |
2007年度は、シリンゴル盟スニット左旗・スニット右旗、赤峰市アルホルチン旗の牧畜および半農半牧地区の戸別調査の補充と村落(ガチャー)リーダーへのインタビュー調査、農民化が進んだ奈曼旗と中国科学院寒旱区環境・行程研究所(自然資本劣化の要因)の訪問などにより農牧民の「資産の保有・アクセス」と「生計戦略」の一層の把握を試みると共に、JICA北京事務所・日本のNGO現場、中国の代表的NGOのCANGOと自治区扶貧弁公室、内蒙古大学自然エネルギー研究所等への訪問・意見交換と日本の中山間地域の集落営農の調査を通じて、生計戦略に影響を与えるコミュニティのあり方と公共政策の検討を行った。 牧民の「資産」保有あるいはアクセスの状況は、劣化しつづける草地と水資源の逼迫、戸別経営のための柵・畜舎、井戸、バイクなど固定資本費用と投入財費用の圧迫、流通・信用市場の不備と不完全性(卸売市場やマイクロファイナンスの制度の欠如)、人々の意識・習慣と協同化の不在など社会組織の双方におけるソーシャル・キャピタルの劣化、リーダーシップ・人材などの人的資本の不十分さなどあらゆる側面で牧畜経営を危機に向かわせている。この条件のもとでみられる典型的な生計戦略は(1)政府の退牧還草政策に沿った、あるいは自発的な都市近郊への移住と乳牛農家への転身や就職、(2)自然資本劣化と政府依存のもとでの高付加価値牧畜(カシミヤ生産・高品質肉牛)によるジリ貧からの自己防衛で、自然資本維持にも効果的とはいえない。経済活動の多様化(加工・流通への進出、再生可能エネルギー・観光資源の活用など)と生計選択肢の拡大のためには、中国他地域や留学からのUターンを含む指導者の育成、協同化への自助努力と自然資本の劣化を防ぐ村落コミュニティ主導の方策(換地や協同化による草地利用の縮小・効率化など)とともに、資産保有・アクセスの状況を好転させ市場を整備する公共政策が不可避と考えられる。
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