Research Abstract |
本研究の直接の目的は,1913-1990年におけるソ連のマクロ経済指標を,ソ連政府が公表してきた公式統計とは独立に,新たに推計することである。このような代替推計を行なうのは,公式統計が経済実態を正確に表現しておらず,経済成長を過大評価していると思われるためである。平成19年度においては,このような代替推計に関する研究の第二年目として,次のような研究が行なわれた。 (1)昨年度に推計した帝政期およびソ連期の工業生産指数推計の精緻化が行なわれた。具体的には,第一に,これまで推計していなかった軍事製品についても生産指数を作成し,第二に,同じくこれまで推計できなかった第二次大戦中の生産指数についても,新たな資料に基づいて推計を拡張することができた。この結果の一部は,2007年7月に,一橋大学経済研究所の21世紀COE(統計分析拠点形成)の研究会で報告された。現在さらに,指数におけるウェイト基準年の工業各部門の付加価値生産額を推計中である。 (2)前年度に引き続いて,農業生産指数の推計を行なった。このうち,ソ連の一共和国としてのロシア・ソビエト連邦社会主義共和国(RSFSR)の農業生産指数の推計結果は,2008年3月に行なわれた一橋大学経済研究所の21世紀COE(統計分析拠点形成)の研究会で報告された。 (3)その他の部門の生産指数推計の基礎となるデータ,すなわち建設,運輸,通信,商業などにおける労働者数,労働時間,賃金,固定資本,設備投資などの資料を収集した。以上の資料の多くは,ソ連時代に公刊された公式統計集のほか,国立経済公文書館(モスクワ)などから得られた。
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