2006 Fiscal Year Annual Research Report
金融市場ボラティリティの非線形時系列モデルによる分析
Project/Area Number |
18530231
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石田 功 東京大学, 大学院経済学研究科, 講師 (20361579)
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Keywords | ファイナンス |
Research Abstract |
世界主要株式市場インデックスの日次収益率データに、金融市場ボラティリティ(リスクの尺度)の代表的既存モデルあるGARCHモデルを拡張したEngle and Ishida(2002)のCEVGARCHモデルをあてはめパラメータ推定を行った。実証結果として、ボラティリティ・オブ・ボラティリティ(ボラティリティ変動性の尺度)のボラティリティ水準に関する弾力性を示すパラメータは各国市場において従来モデルが含意する値よりも大きな値である可能性が高いことが示された。高弾力性値は市場が撹乱要因にさらされたときに急激にそのボラティリティが高まることを意味するので、リスク管理、派正資産評価、さらには金融政策上の含意も大きい。しかし、CEVGARCHモデルは収益率の条件付分散を差分方程式で記述するタイプのモデルであるので、非負条件等、パラメータ制約が大きいモデルであり、このモデルの推定結果が示す高弾力性は「見せかけ上の効果」である可能性も否定できない。そこで、伊藤の公式を用いてCEVGARCHモデルを条件付分散の対数を記述するタイプのモデルに近似的に変換、さらにボラティリティ方程式をニューラル・ネットワーク型の柔軟性を持つ非線形関数として記述するCEV-exponential GARCH(CEVEGARCH)モデルを定式化し、最尤法によるモデル推定を行った。結果として、弾力性パラメータ値はやはり従来考えられていたよりも高い可能が大きいことが分かった。また、このようなモデルにおいて非線形項が何個必要かの検定においては識別性の問題があり、尤度比検定等の標準的な検定手続きがそのままでは適用できない。そこで、Granger and Terasvirta(1993)のラグランジェ乗数検定及びLee,Granger and White(1993)のニューラルネットワーク検定の2つの非線形性検定アプローチをボラティリティ方程式の特定化検定に拡張し適用したが、線形ドリフト項と弾力性一定型ショック係数を持つCEVEGARCHモデルは統計的に棄却されず、一方、従来型GARCHモデルは棄却された。
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