2008 Fiscal Year Annual Research Report
行動ファイナンスによる地域金融機関の貸出行動の分析とリレバン型経営モデル
Project/Area Number |
18530232
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
青木 逹彦 Shinshu University, 経済学部, 教授 (50092854)
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Keywords | 融資行動 / 経営不振 / プロスペクト理論 / フレーミング効果 / メインバンク関係 / 追い貸し |
Research Abstract |
日経NEEDSのオンライン・データベースを用いてメインバンク制を含む企業銀行間関係を行動経済学の観点から実証分析した。本研究の特徴は、財務的に困難な企業の割合の多い3業種(建設、小売、不動産)を取り上げ、その上場企業を売上高変化率によって上位と下位それぞれ15%ずつのグループに分け、それぞれに対する銀行貸出を企業と銀行双方の財務データを用いて分析したことで、それによって売上パーフォーマンスが顕著にかつ持続的に異なる2つのグループに対する融資行動が異なるフレーミングの設定下に置かれた意思決定として、「フレーミング効果」が非ファンダメンタルズを介して現れることを検証しようとしたことである。「既存貸出残高ないし(過剰)債務」のような非ファンダメンタルズはプロスペクト理論にあっては参照点としての役割から、また企業と金融機関それぞれにとって相手の「重要度」を表すものであることから、追い貸しを含む融資決定に関与しうることが期待されるが、われわれはそうした非ファンダメンタルズがフレーミング効果を容れて有意に働くことを回帰分析及びロジット分析で検証することができた。上位企業グループに対するメインバンクの融資決定には、市場性負債を選択する銀行離れによる貸出環境の悪化の下、ファンダメンタルズ変数からは説明し得ないような貸出行動が採られており、これは売り上げ増が顕著で持続するというフレーミング効果を容れて融資先に対するプレゼンスを保持せんとするものとして整合的に理解できた。他方、下位グループに対する融資行動については、資金繰り救済が求められ、しかも非メイン行は負担を「メイン寄せ」するなか、プロスペクト理論にいう「損失フレーム下でのリスキーな選択行動」が期待されたが、メインバンクは多大な負担を被りながらも、追い貸しのような市場規律から外れた行動は検出されなかった。以上のファインディングは行動経済学に立脚した規範分析が求められる中、政策的に含意するところからも意義を認められるものである。
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Research Products
(4 results)