2006 Fiscal Year Annual Research Report
市町村統合再編後の財政ー日米比較をもとに住民参加型のまちづくりの可能性を探るー
Project/Area Number |
18530233
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
川瀬 憲子 静岡大学, 人文学部, 教授 (40224779)
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Keywords | 市町村合併 / 地方自治 / 地方財政 / まちづくり / 住民参加 / 地方交付税交付金 / 地域自治区 / NPO |
Research Abstract |
本研究の目的は、市町村統合再編後の自治体財政に及ぼされる影響を実証的に検証し、今後の国と地方の財政関係、都道府県と市町村との関係に関する方向性を導き出すとともに、地域自治区単位での住民参加型まちづくりや行財政運営の可能性を、日米比較を通じて探ることにある。初年度にあたる2006年度は、主として日本における市町村合併前後の自治体行財政や地域自治区の実態調査、合併を選択しない小規模市町村、さらには離島(島嶼)自治体の分析を中心に行った。2007年度は、アメリカニューヨーク州内市町村を事例に、大都市や小規模市町村などにおいて実施されているまちづくりや行財政運営における住民参加の実態調査を実施する予定であり、その意味では、まだ一連の研究の中間段階にあたる。 2006年度において調査を実施したのは、(1)12市町村を統合再編し政令市へ移行した静岡県浜松市、(2)旧静岡市、旧清水市の大規模市町村合併に続いて周辺の旧蒲原町を編入した静岡市、(3)小規模町村としての存続を決定し、合掌造りで有名な白川郷などユニークなまちづくりを実践している岐阜県白川村、(4)小規模離島町村の事例として、2002年4月1日に旧具志川村と旧仲里村合併して成立した久米島町の各市町村である。 「平成の大合併」によって、全国の市町村数は1800程度にまで再編成されたが、財政危機下のおける合併であったことに加えて、合併特例債の活用などの財政誘導による財政面への影響や「三位一体の改革」による交付税の縮減などの影響が相まって、多大な財政問題を抱えている自治体が多い。「昭和の大合併」後に、合併した市町村の多くが財政再建団体への転落を余儀なくされたという歴史的事実と比べると多くの相違点を見いだすことができる。まず第1に、先行事例ともいうべき静岡市の場合には、財政誘導による合併特例債の活用と積極財政という側面が強く、三位一体の改革に伴う交付税の縮減による影響を強く受けた。第2に、後発事例となる浜松市の場合には、人件費の大幅な削減などリストラ型合併という点を特徴としている。地域自治区において住民全員参加型のNPO組織が作られるなどの新しい動きが注目される。第3に、小規模町村の場合には、財政運営面やまちづくり地域おこしの面で創意工夫がみられる地域が数多く存在していることである。
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