2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18530238
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
赤石 孝次 長崎大学, 経済学部, 助教授 (20192875)
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Keywords | 税制改革 / 財政社会学 / 新政治経済学 / 最底辺への競争 / 再分配政策(普遍主義 / 限定主義) / 日米比較 / 政治と市場の分断的構造 / 仕切られた多元主義 / 基幹税 |
Research Abstract |
本年度は、OECDデータを用いて、先進諸国の税制比較を行い、グローバル化のもとにおける国際的な税制の動向に関する特徴の抽出作業を行う一方で、経済学、政治学、社会学で展開されてきたグローバル化論に関する先行研究のサーベイを行った。これらの作業に加えて、Steinmo教授とメールを通して情報・意見交換を行い、日米比較分析を進めるうえでの理論的基盤を確立する作業を行った。 (1)グローバル化論が主張する「最底辺への競争」に適した税収構造への収斂ではなく、各国税制間の偏差の存続が確認された。具体的に明らかにされた点は以下の3点である。第1に、普遍主義的再分配政策志向のスウェーデンやデンマークでは、平均的中流層を対象とした社会保障政策の財源として賃金所得と消費を課税ベースにした広範な中流層への課税に依存することに成功した。第2に、限定主義的再分配政策志向の日本では、法人税収の急速な低下の中、消費税の導入にもかかわらず支出水準に合致した税負担を国民に求めることができず、公債に抱かれた財政運営を余儀なくされた。(第1・第2点は、2006年7月公刊論文の追加修正という形で生かされている)。第3に、限定主義的再分配政策志向が強いアメリカでは、1980年代に賃金所得及び資本・法人所得に依存した歳入調達構造を再構築しようとしたが、経済のグローバル化の進展は資本・法人所得への依存を困難にし、賃金所得を課税ベースにした基幹税の再構築という本来の政策意図の維持をも困難にした。 (2)European UniversityのSteinmo教授とのメールのやりとりで、限定主義的再分配政策志向の日本とアメリカで、一方は法人所得に、他方は、賃金所得に依存した税制の形成理由やグローバル化と高齢化の進行の中で、それらの維持が困難になった理由を明らかにするには、政治構造と市場組織の態様及びそれらの相互依存関係の相違に関する新政治経済学的分析が必要なことが確認された。
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Research Products
(1 results)