2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18530238
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
赤石 孝次 Nagasaki University, 経済学部, 准教授 (20192875)
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Keywords | 財政社会学 / 比較財政史 / 進化論 / マイクロ=メゾ=マクロ・ループ / 古典的所得税制 / 控除型消費税制 / フラット税・USA税 / ハイブリッド税化 |
Research Abstract |
今年度は、米国の租税構造の特異性をOECDデータの枠組みで捉え直す作業を通して抽出した同国の租税政策の特徴を、財政社会学と関連付けることで同国の租税政策の比較財政史的特徴を明らかにし、財政社会学から捉えた同国の租税政策の意義と限界ならびに今後の展開可能性の抽出を試みた。そこでは具体的に以下の諸点が明らかにされた。第1に、Campbellが提示した財政現象の規定要因を相互に代替的かつ補完的関係に位置づける上で必要な制度の意味を考えるには、経済学、社会学、政治学における進化論的展開を踏まえた視点が必要であること。第2に、これを踏まえると、財政を中心に据えた社会の動態的な変化を説明するためのマイクロ=メゾ=マクロ・ループが重要であり、そこにWeberとSchumpeterによって展開された財政社会学の方法的統合の問題に取り組む鍵も潜んでいること。第3に、米国は、賃金と消費に対する税の双方を利用する他の先進諸国と異なり、連邦歳入の大きな部分を賃金に対する税にもっぱら依存する租税構造を有するが、投資控除、投資所得非課税措置、投資所得に対する税の繰延べによって、実質的に古典的所得税制から控除型消費税制への移行を加速させていること。第4に、州・地方の売上税の存在故にEU並みのVATの導入が不可能であり、税率のフラット化と課税ベースの拡大を追求せざるを得ない米国で、フラット税やUSA税の提案が政治的争点となり、所得税が消費税化していくのは、強力な議会権限という米国の政策決定過程の特徴の帰結であること。本研究は、各国が消費と賃金の双方に課税ベースの軸足をおく中で、米国が表面的には賃金だけへの依存を続けながら、実質的に控除型消費税への移行を加速させた原因を財政社会学的に分析することで、ハイブリッド税化の宿命を明示した点で理論的かつ政策論的意義と重要性をもっ。
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Research Products
(3 results)