2009 Fiscal Year Annual Research Report
グローバリゼーション下の経済発展と金融制度に関する政治経済学的分析
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18530245
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
藪下 史郎 Waseda University, 政治経済学術院, 教授 (30083330)
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Keywords | 経済発展 / グローバリゼーション / 非対称情報 / 世界的金融危機 / 金融制度の不安定性 / 資産市場の一般均衡分析 / 証券化 / 社会的資本 |
Research Abstract |
本研究においては、市場の不完全性と情報の非対称性の観点から「経済発展と金融制度」を理論的かつ歴史的に分析することを目的としている。2008年後半から世界的に広まった金融不安は、世界経済を大不況に陥れたが、これはグローバリゼーションの下で世界各国が密接に依存し合っていることを示している。これらの問題を考察した本年度の研究成果は以下のとおりである。 (1)昨年度から作業を進めていたテキスト『金融論』(ミネルヴァ書房)においては、これまで行ってきた不完全情報下での金融市場と制度に関する研究成果を大きく反映させた。すなわち、第I部「貨幣・金融市場・マクロ経済」では不確実性でのマクロ経済活動と金融市場との相互依存関係に注目したが、第II部「金融市場・制度と不完全情報」では、非対称情報が金融市場およびリスク市場に及ぼす影響と銀行システムの安定性の問題を考察している。特に、最終章においてはグローバリゼーション下での資本市場また金融制度の問題に注目している。すなわち、国際的な資本移動が行われる金融市場モデルにおいて政策の有効性を検討し、また債権の証券化と経済のグローバル化が情報の非対称性のもたらす問題をより深刻化するメカニズムを考察している。 (2)研究代表者が機構長を務める早稲田大学日米研究機構において、今次の世界的金融危機の原因とメカニズムを解明するためのシンポジウムを開催し、そこでの発表論文を収録するとともに『世界政治経済と日本・米国・中国』(東洋経済新報社)とする書籍を刊行した。そこでは監修のみならず第12章「グローバル社会における政治経済と相互依存関係」において(1)の議論を延長させるとともに、グローバル化する世界における国際関係と国内政治の重要性を指摘した。 (3)一橋大学のコンファレンスのために和島氏との共同研究「ROSCAと社会的資本」を準備した。
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