2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18530246
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
谷川 寧彦 早稲田大学, 商学学術院, 助教授 (60163622)
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Keywords | 経済学 / ファイナンス / ステークホルダー / 企業買収・合併 |
Research Abstract |
平成18年度に行われた敵対的買収では,経営方針(事業内容)や経営権の移転について,既存経営者,従業員,銀行,地域関係者,主たる株主など企業の利害関係者(ステークホルダー)と買収者(経営候補者)とが,一般株主へ向けて意見を公表しあうケースが見られた。今年度は,当初計画通り新聞記事検索を活用して資本面および組織面で変更のあった企業データを収集するとともに,こうしたケースに関するデータも併せて収集する作業を進めた。また,M&A(企業合併・買収)における株式持ち合いに関する理論的整理を行い,企業経営権に伴う非金銭的な経営者効用の存在と企業買収の社会的厚生の関連、株式持ち合いに伴う価格効果などについて,谷川(2007)として取りまとめた。この内容は以下の通りである。 株式持ち合いおよび株式持ち合いを強化する第三者割当増資は,「価格」面では買収を防衛する効果はない。ただし、株式持ち合いに実質的な経済効果があり、敵対的買収を強行すれば持ち合いが解消されその経済効果がなくなって株価下落が起こると予想される場合は、キャピタルゲインを主眼におく敵対的買収者を思いとどまらせる効果がある。また、経営権に高い効用を持つ経営者が経営権を維持するため(事業価値に効用分を上乗せして)高い株価防衛ラインを設定すると、事業キャッシュ・フローにもとづいた値付けでは及ばないので、経営権争奪・防衛戦の勝者が事業価値を高めるものとは限らない。特に、譲渡制限付き株式を所有する既存経営者がこれを売却することで経営権委譲を行う場合、最も高い価格をつける買収者が現れるのを待って売却しようとする行動は--それは経営者にとっては経済合理的な行動ではあるが、「売り手独占」と似た非効率性をもち過剰防衛となる可能性が考えられる。
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Research Products
(1 results)